フェラーリのメカニズム解説その14:F1システムの故障診断① 前書き
今回は本業の方で問い合わせが多い、355や575から始まり430や599までのフェラーリに採用されていた自動変速機のF1システムについて、症例に応じた故障診断の手法を中心に解説してみたいと思います。
このネタは解説する事柄が多いので何回かに分けます。あと口調は物書き風でなく、釣れないオヤジにて。
フェラーリのメンテナンスにおいて、元々故障診断の難易度がかなり高いシステムであった上に、F1システムを使っている最後のモデルでも10年近く経っているので、当然システムを構成する各パーツの劣化は進んでいる訳でありまして、いかに効率良く故障診断するかが課題となります。
まずは、このシステムの概要を簡単に説明すると、元々はマニエッティ・マレリー社がアルファロメオ向けに開発したセレスピードが原型ですね。それを同時期のフェラーリ、マセラッティが採用し、少し遅れてランボルギーニも採用したという流れです。ですから、今回の記事はフェラーリだけでなく上記車種でも同じ方法で故障診断ができるかと思います。
システム最大の特徴は、マニュアルミッションに複雑な機構を追加して自動変速化していることで、それらを大まかに分類すると、制御を行うためのセンサーやコントロールユニット、クラッチペダルを踏むことやシフトレバー操作を行うに相当する動力となる油圧回路、あとはクラッチなどのマニュアルミッションと同じ機械部品となります。
そしてこれも大きな特徴なのですが、上記の電気、油圧、機械を構成する膨大な部品のうち、どれが壊れてもギアが入らない若しくはギア抜けするという症状にしかなりません。ですから、ギアが入らないにしてもそのプロセス、例えばシフト操作をエンジンを掛けた瞬間から全く受け付けないのか、それとも何十分か走行すると不具合が出るのか、その時警告は点灯しているのか、といった細かい状況の確認も必要となるのです。
ですから、新規の電話問い合わせで多い、
「ギアが入らないけど幾ら掛かりますか?」
という質問には、症例の知識が多い程答えられないです。その理由は、お医者さんに例えると分かり易いかな。病院に電話して、
「お腹痛いけど何が原因ですか?」
と質問して、
「それは○○病ですね。」
と即答するのは、まず間違いなく藪医者ですよね。
まあ外車業界特有の適当に何か答えておけみたいな、一見親切そうで実はいい加減という体質がベースになっているのだろうなとは思いますが、ここで知って頂きたいのは、F1システムの故障診断は難易度が高いケースが少なくないので、電話で故障箇所当てクイズをするんじゃなくて、信頼できる工場の予約確認をした方が、後々良い結果に繋がるということです。
では次回から、具体的な症例と対処法について解説していきます。
以下の記事が、オーナーさんのみならずF1システムのメンテナンスに苦労する同業者さんの参考になれば幸いです。
これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。