50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その18:F1システムの故障診断⑤ 油圧系統の漏れ

f:id:tenaraioyaji:20200414142351j:plain

今回もF1システムの故障診断ネタで、油圧編を続けてみたいと思います。

前回はアキュームレーターに絞って解説しましたが、今回はF1作動油の漏れについてです。

オイル漏れというと、外に漏れて床とかに溜まるイメージですが、F1システムの場合は外にも漏れますがアクチュエーターやソレノイドバルブ内部で漏れて、外部には出てこないケースもあります。

外に漏れる実例で多いのは、クラッチレリーズシールからの漏れです。クラッチの摩擦熱が掛かる環境下で、クラッチを絶え間なく断続させるため頻繁に動くという、かなり酷使される部品なので、その油圧をシールしている部品の劣化は早いです。

あと、アクチュエーター周辺の高圧が掛かるホースの破裂もたまにあります。これは盛大にオイルを撒き散らすので故障診断の難易度としては低く、この程度の紹介に留めておきます。

あと、355F1に限っては、アクチュエーター内部のシリンダーとピストンの裏側が大気開放されているので、エンジンでいうところのブローバイと同じイメージで、正常でも多少はオイル漏れします。そのため、漏れる量が許容範囲であるかといった基準で、修理を行う必要があるか判断します。

外部にオイルが漏れて作動油が減っていくと、そのうちポンプからアキュームレーターに圧送するオイルにエアが混ざり始め、エアを圧縮する分アクチュエーターのストロークが不足してくるので、作動に支障をきたすこととなります。

また、レリーズから漏れるとオイルがクラッチディスクに付着するため、シフト時クラッチが繋がる際に滑りを生じます。そうなるとシフトフィーリングが悪くなる上に、クラッチの寿命も大幅に縮めてしまいます。

レリーズからの漏れを修理する時は、クラッチ交換するのと同じくらい分解しなければなりませんし、後の二度手間を避けるため、漏れたオイルがクラッチに影響を与えたか、レリーズベアリングは変形が発生していないかなど、機械的な消耗具合も同時に点検することになります。そして、それらの部品を追加で交換するケースは少なくないため、高額になりがちな作業であります。

オイルが内部リークしている場合の診断は厄介です。

355では上記の通り、アクチュエーター内部の漏れは外に排出されるため見た目で判断できますが、360以降はアクチュエーター内部で漏れたオイルはリザーバータンクに戻してしまうので、外観からは判断がつきません。

そこでまずはテスターの出番となり、アクチュエーターのオイルリーク量のパラメーターを呼び出すことができるので、その値を参考に、アクチュエーターの修理が必要か判断していく訳です。

ただ、オイルリークの項目があるといっても、オイルの流量を直接測るセンサーは付いていないので、恐らくポンプが停止している間の圧力低下を監視して、それで計算している値です。ということは、前回解説したアキュームレーターの劣化が進んでいると、油圧低下のスピードが早くなるので、アキュームレーターの状態により大幅な誤差が出ることを踏まえておかなければなりません。

内部のオイルリークが多い時は、どのような症状になるかというと、シフトを動かす油圧の一部が抜けてリザーバータンクに戻ってしまうため、シフトのストロークが足りなくなり、ギアが入らないとか走行中ニュートラルになるケースが多いです。

アクチュエーター内部には2本のシャフトがあり、その両端に油圧をかけてシャフトをスライドさせる構造になっているので、高圧を掛ける部分が4箇所存在しています。

また、そのシャフトはそれぞれマニュアル車のシフトレバーでいうところの、横方向と縦方向を担当しているので、どのギアが入らないか、何速に入れるとギア抜けするかの症状を基に、油圧が掛かる4箇所のうち、どれに漏れが発生しているか、更に細かく見当をつけていきます。

今までは、マニュアル車でいうところの、シフトレバーを右横に振る方向でリークが発生していたケースが多かったです。

アクチュエーターで間違いないなと判断した後、うちでは即交換せずに一度分解して、修理できるなら修理という手順を踏むのですが、この手順を解説すると相当長くなるので、これは後に改めたいと思います。

ただ、全部が修理可能という訳でもなく、交換が必要なケースも出てきます。

油圧を送る側のソレノイドバルブで漏れが発生したケースもありましたが、こちらは希で今まで2台位かな。うちでは10年1台位の頻度です。

どちらもソレノイドバルブ内部の、磁力によって動くピンのような部品が折れていたため、アクチュエーターに油圧が掛かりっぱなしになり、ギアが入らない症状になっていました。

頻度が少ない故、点検のフローチャートでいうと末端になりますので、これが原因だった時は、かなり苦労した後の原因特定でした。

 

 これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。