50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その22:F1システムの故障診断 機械的な原因編③

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F1システムの故障診断の機械編も3回目となりまして、今回はクラッチが原因の場合の症例と診断方法です。

前にも解説した通り、マニュアル車のようにクラッチが滑って交換となる例は稀で、クラッチに過大な熱が掛かったことによるディスクやカバーの変形が原因で、クラッチの切れが悪くなり交換する例が大半でした。

前回解説したレリーズベアリングだけでなく、クラッチカバー側もレリーズベアリングと当たる部分に変形や削れが生じやすいため、クラッチカバーとレリーズベアリングが接触する部分の寸法が変わることでストロークセンサーからの信号値の誤差が拡大して、コントロールユニットは正常に制御しているつもりでも、実はクラッチを押し切れてないケースや、クラッチディスクの振れが大きくなってしまい、クラッチが切れるべきストロークでも、フライホイールクラッチカバーとの間に摩擦力が残ってしまうなど、発熱が多いと様々な影響を及ぼします。

といっても、レリーズベアリングの時と同様で、いきなり見込みでクラッチ交換する訳にもいきませんから、レリーズストロークセンサーの交換テストや、アクチュエーターの状態など、ミッションを降ろさずにテストできる箇所から診断を進めて、いよいよこれはクラッチの内部を見ないとダメそうだな。となった段階でクラッチを分解するという手順になります。クラッチウエアの値は前述した通りで参考程度にしますが、例えばテスター上で50%を超えているから必ず交換とか、そんな判断はしていません。

クラッチを分解してチェックする主な箇所は、上記のクラッチカバーの変形具合と、ディスクの状態です。ディスクの残りはテスターの値にかかわらず、摩擦面表面に彫られた溝が消えかかっているとダメかな。というのが経験的に身に付けた判断値です。

あと、430やENZOなどツインプレートの場合は、発進時に急激な熱が掛かってしまうと、1度でクラッチが終わってしまうこともあります。今までの例では、不慣れなレッカー屋さんが積載車に積み込む際、半クラを使い過ぎてクラッチが焼けてしまい、現地に着いて降ろそうとしてもギアが入らなかったことが、うちでは3件ありました。

これは、ツインプレートクラッチが繋がる時は、4面同時ではなく1面ずつ順番に繋がっていくという特性が関係していまして、1面だけしか繋がっていない時にアクセルを開けすぎて大きなトルクを掛けてしまうと、構造上そのトルクに耐えられないということです。

この時は、アンダーパネルを外してミッションケースの小窓から目視点検をすると、ツインプレートクラッチの4面ある摩擦面のうち、1面だけに高熱が加わり白く変色しているので、割と容易に判断できます。

クラッチ交換となると、例えば360ではレリーズベアリングやストロークセンサーも同時に交換すると、現在70万円を超える金額になってしまうので、交換が必要という判断には慎重を期すよう心掛けています。

 

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