50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その24:フェラーリ308とは、どのような車か

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週末のイベントであったオートモービルカウンシルは無事終了いたしました。

私は7/31の金曜の終日と、8/2日の午後からイベント終了後の搬出まで居りました。

うちのブースに立ち寄って頂いた方には積極的に声をかけさせて頂いたのですが、私が存じ上げないフェラーリのオーナーさんが多かった印象で、世間は狭いと思うこともありますけど今回は逆で、いや世の中色んな方がいるんだなと。

今まであまりイベントに展示したりとか無かったので、今回は新鮮な体験でした。

足を止めて下さった方々に厚く御礼申し上げます。

さて今回は、その時にフェラーリの308と328を展示したので、308や328はこんな車だよという解説文を会社案内と一緒に配ってまして、それを以下に掲載してみたいと思います。

おおむね私が書いた本の内容と被るんですが、紙面の都合でカットしたところを復活というか、ここまで書きたかったんだよねを実現した感じです。

パンフレットでは2車種を一度に解説しているのですが、意外と文字の分量が多いので、今回は308で次回は328に分けたいと思います。

 

308の解説 

フェラーリ308(GTB/GTS)は、1975~85にかけて生産された、2シーターのV8ミッドシップモデルである。先行モデルである308GT4で、初のフェラーリ製V8エンジンが搭載され、その後に2シーターモデルとして308GTBが登場した。

実質的な先代モデルは246GTであり、それは、横置きエンジンの下にトランスミッションを配置した独特なレイアウトを踏襲したことや、サスペンションやブレーキに共通部品が多いことから窺える。

その両車共、ピニンファリーナがデザインを担当しているが、別ブランドであったDinoとの差別化を、デザイン面でも図ろうとしたためであろうか、246GTではファニーな顔つきで丸みを帯びた造形なのに対し、308ではクサビのようにエッジを効かせシャープである。これはまるで、対極的なデザインによって連続性を否定しているかのようで、その背景など興味をそそられる部分である。

これはフェラーリの車造りで共通のことであるが、デザインが優れているだけでなく、その優れたデザインの形を作り上げるために、手間を惜しまず製作されている。308では、無数に貼り付けられたアルミのルーバーが特徴的なエンジンフード、ひさしでテールランプを囲んだようなリアの造形、ドアから始まりリアフェンダーに開口部を持つ、エアダクトのエッジが効いた形状などが挙げられる。

また、この頃から各社で採用されるようになったリトラクタブルのヘッドライトは、一目瞭然でスーパーカーであることを示すアイテムである。現在では法的に新型車には使用できないため、今後はリトラクタブルライトの新車が出ることはなく貴重である。

308が10年に渡り生産された間は、自動車に関する法律が激変した時期であった。それらの排ガスや衝突基準の規制強化に対応すべく、アップデートが頻繁に行われた。

また、1977年からはルーフを取り外せるモデルであるGTSが登場した。手でルーフを持ち上げて外し、シート後に設けられたスペースに収納する方式であり、これはF355GTSまで20年間踏襲されることになる。

そのため、車名は同じ308でも、エンジン、ボディー共バリエーションに富むことが特徴である。

エンジンは、当初DOHC2バルブとキャブレターの組み合わせで、潤滑はドライサンプとウエットサンプの両タイプが存在する。その後の308GTB(GTS)iでは、潤滑方式はウエットサンプに統一され、2バルブのまま機械式のK―ジェトロによりインジェクション化された。1982年以降の4バルブ化されたモデルの名称は、308GTB(GTS)iクワトロバルボーレとなり、バルブ数の他にも、マーレー製の鍛造ピストンやニカジルメッキされたアルミシリンダーライナーを採用するなど大幅な変更が行われ、これが308シリーズの最終エンジンとなる。

90°V8、180°クランク、ボアストロークは81×71mmで総排気量2,926ccであることは、各エンジン共通だ。

ここで、それぞれのエンジンのメーカー公称スペックを比較してみると、

 

初期型:(1975~1979)

パワー 255PS/7,000rpm トルク 30.0kg/5,000rpm

 

GTB(GTS)i:(1980~81)

パワー 214PS/6,600rpm トルク 24.8kg/4,600rpm

 

クワトロバルボーレ:(1982~84)

パワー 240PS/7,000rpm トルク 26.5kg/5,000rpm

 

上記のバリエーションの他にも、それぞれのエンジンに触媒が装着されたアメリカ仕様が存在し、それは総じてパワーが低くスペックは異なっているが、ここでは代表的なヨーロッパ仕様の記述だけに留めておきたい。

308は、排気量が同じ1つのモデルでもエンジンが6種類存在する。それは、排ガス規制に対応するためと、その結果大幅にダウンしたパワーを復活させるべく、3年ごとにエンジンの大規模な改修を行なった結果である。だが、初期型のパワーを超えるには、328の登場を待たなければならなかった。

ちなみに日本のディーラー仕様は、アメリカ仕様のエンジンがベースとなっている。

現在の感覚からすればパワーは大きくないが、初期とクワトロバルボーレにおいてはデータが示す通り、7,000rpmがパワーのピークという超高回転型で、パワーが適度なため割と気軽に全開でき、回せば回すほどエンジンが吠える痛快さが持ち味である。

600PSを軽く越える昨今のフェラーリV8は、速すぎてアクセルを踏めるシチュエーションは限られてしまうが、308エンジンの気軽に高回転を楽しめるキャラクターは、現在においても充分に魅力的である。

ボディーの材質は初期型がFRPで、後にスチールへ変更される。更にアメリカ仕様では、通称5マイルバンパーという、衝撃を吸収する構造の大柄なバンパーが採用され、それはボディーに大きな変更を加えることなく取り付けられたので、他の仕様よりもバンパーが飛び出た独特の外観となる。そのため、車重は初期のFRPボディーが最も軽量で、次にヨーロッパ仕様のスチールボディー、アメリカ仕様はバンパー重量が嵩むため最も重くなる。

これらの理由で、308は初期型のFRPボディーがシリーズ中で一番パワフルかつ軽量となる。その動力性能は当時のレベルとしては相当に高いものであり、同じフェラーリV8と比較すると、直線加速においては348までのモデルと遜色がないレベルである。

内装は、メーターの縁やシフトゲートなど、所々に使われるクロームメッキがアクセントとなっているが、受ける印象は素っ気なくスパルタンなもので、まるで走りに徹するため余計なものを削ぎ落したかのようである。

現在の乗用車の感覚からすると室内スペースは広いと言えず、小ぶりで薄いシートを採用して、少しでも室内容積を稼ぐ工夫をしているようであるが、特に縦方向の寸法が狭いため、大柄な人が乗ると頭がルーフに当たる程である。

ドライビングポジションは、ステアリングとシフトゲートの位置が遠いという、当時の典型的なイタリアンポジションだ。腕に合わせてシートを前にした方が運転しやすいのだが、その場合曲がった膝がキーシリンダーに当たってしまい、しかもフロントウインドは大きく傾斜しているため、頭はサンバイザーに付きそうな位である。

文章で表現すると、かなりの窮屈さを強いられるように思われるかもしれないが、ガラスエリアが広いため意外と視界が良く、そして多くの光が入り室内は明るいため、狭い室内でも収まるところに収まって走り出してしまえば圧迫感は思いのほか少なく、スパルタンさを強調しながらも最低限の実用性は確保する、匙加減の絶妙さが感じられる。

スモールフェラーリというジャンルを確立し、生産台数でも成功した246GTの後継車を造り上げることは、プレッシャーの中で大変な苦労を伴ったことであろう。その末に登場した308は、新たなスモールフェラーリの形を提供し、痛快に楽しく走れることも追及した傑作であり、現在でもその魅力は色褪せることが無い。

 

 

 

 これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。