フェラーリのメカニズム解説その11:330GTCのエンジン
写真はフェラーリ330GTCの1968年モデルのエンジンで、メンテナンスを終えボディーに搭載する直前の様子だ。
伝統のコロンボエンジンで、ボアは77mmに対しストロークは70mmとなり、排気量は4Lまで拡大されている。
概要を簡単に解説すると、OHCの2バルブ、カムはチェーン駆動、エンジン前端の左側に装着された機械式の燃料ポンプは、クランクに設けられたカムで駆動され、キャブレターは2気筒で1つのバレルを共用するためツインチョークタイプが3基である。
OHCのため、カムシャフトからロッカーアームを介してバルブを駆動しているが、ロッカーアームとカムの接触部にローラーを用いてフリクションの低減を図る構造を採用し、それは当時のフェラーリエンジンの定番であった。
ポイント点火のディストリビューターは各バンクごとに1つ装着され、カム後端に設けられたギアで駆動される。
以上のように、当時のフェラーリエンジンの流れの中でオーソドックスに纏められた印象を受ける内容であるが、スポーツモデルとはカムシャフトの作動角を変更することにより、エンジンのキャラクターを造り分けている。
当時のスポーツモデルは排気上死点のオーバーラップが70度前後であったのに対し、330では40度程と少ない。これはモデルの用途を想定し、ピークパワー優先で突き抜けるような吹け上がりを求めるよりも、ツーリングのような走り方での快適さを求めた結果であろう。
実際、公道で多用する2,000rpmから6,000rpmの間ではトルクフルで、12気筒特有の燃焼間隔が短い滑らかなフィーリングでありながらも、回転上昇に伴いながらフェラーリ特有の「吠える」エンジンに仕上げられている。
ひたすた飛ばし続けるというよりも粋に移動すること、オープンモデルも存在し、のんびリ走ってもフェラーリという目的として作られたであろう330 GTCのキャラクターに相応しい仕立てのエンジンである。
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