50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その6:F50のエンジン

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Removed transmission of Ferrari F50

写真はクラッチをメンテナンス中のF50だ。エンジンの前側とフレームは直にマウントされている。

F50は成り立ちが特殊なため、その前後のモデルとは機構的に全く関連が無く、まるでF50だけ別のメーカーが造ったかのようである。その全てを解説すると文章は膨大になってしまうので、今回の話題はエンジンだけに絞ってみたい。

F50のエンジン最大の特徴は、F50にしか搭載されていないことだ。

フェラーリは少量生産メーカーである宿命なのか、一度開発したエンジンはバージョンアップを施しながら長期使い続ける傾向で、例を挙げると、新規開発され2000年代初頭のENZOに初めて搭載されたエンジンは、それから15年経った812でも現役であり、V8も以前の記事で308エンジンを紹介した記述の通りである。

そうでないということは、このエンジンの出自はレーシングカーであり、それもF1のエンジンではなく当時の333SPのエンジンに公道を走るための対策を施し、量産したのがF50のエンジンと私は解釈している。

そう思い至った理由は単純で、当時F1のレギュレーションであった3.5lという排気量に対してカツカツに設計されたであろうF1エンジンを、どこをどう弄れば4.7lまで排気量が拡大できるのかという。

シリンダーブロックが246GT以来の鉄製なのもフェラーリエンジンとしては独特だ。

これは、エンジンがモノコックに直接マウントされ、後ろのミッションケースには直接サスペンションアームが取り付けられるという構成のため、エンジンには燃焼圧力や回転力の他にも、フレームとしてサスペンションも支える役割を担うためであろう。

他にもエンジンの剛性を上げる工夫は各所に見られ、一般的な紙のようなシートをカットして製作されたガスケットは使われず、シリンダーヘッドも含め部品の接合部分は直接金属同士が接触し、掘られた溝に紐のようなゴムやOリング、燃焼圧力が掛かる箇所では金属製リングを嵌め込むことでシールを行っている。

エンジン内部の構成は、5バルブとチタンコンロッドという、1990年代中盤のフェラーリエンジンを象徴するような内容だが、同様な内容のF355よりも更に手間をかけて造られている。

V8では、インテークバルブだけ放射状のバルブ配置だったのに対し、F50ではエキゾーストバルブも放射状に配置されている。放射状のバルブを直押し駆動するには、高度にテーパー加工されたカムが必要で、V8ではインテーク側だけに留めていたのを、F50では両方に採用し、当時最高とされた技術を惜しみなく投入した印象を受ける。

エンジンのフィーリングは、上記の拘りに加え回転部分の重量が軽いことが印象的で、他の12気筒とはレスポンスの次元が違う。12気筒特有の悲鳴に似た排気音で一気に吹け上がり、走り終えてエンジンを止めると、キーを捻った瞬間に惰性でエンジンが余計に回ることなく瞬時に停止する。

恐らく今後F50を解説した場合に同様の結論に至ると思うが、それは、当時5,000万円だった車両価格は、エンジンだけを検証した結論でもバーゲンプライスだ。

突然フェラーリ各モデルの系統に全く関係なく、孤高と言えるメカニズムで突然登場し、それが後に継承されなかったのか。これからまだまだ検証していきたいモデルなのがF50だ。