50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説 その1:308初期型のエンジン

f:id:tenaraioyaji:20200315192930j:plain

次の釣りに行くまで間を持たせるのに、何で全然関係ないフェラーリの解説なんだよ。と、自分でも思う訳ですが、結構真面目に書いていきますので、お付き合いの程、宜しくお願いいたします。

f:id:tenaraioyaji:20141226135819j:plain

FERRARI 308 dry sump engine F106C

写真のエンジンは、ファイバー製ボディーが特徴の308初期型に搭載されるフェラーリV8である。

当初はフェラーリの名を冠されなかったDino 308GT4に初めて搭載され、その後308GTBからは正式なフェラーリのモデルとして、このエンジンが搭載されるようになった。

それまでのDinoで命名されていた「135」から始まるエンジン型式が、フェラーリの頭文字を冠した「F106」に変わり、それまで12気筒以外を公式には認めていなかったフェラーリが、やっと8気筒に本腰を入れたように感じられる。

モデルチェンジの流れからすると、エンジンもDinoの流れを汲んでいるのかと思いきや、エンジン各部を観察するとDinoの6気筒エンジンとは大きく異なり、なるべくシンプルな構造を目指し、新規で設計した印象を受ける。

具体的な例を挙げると、Dinoでは1気筒につき1つのクランクピンを設け、バンク角分の位相を補正した複雑な造形のクランクは、4気筒のようなシンプルな180度クランクに変わり、これもDinoのエンジンで大きな特徴であった、吸排気系バルブの挟み角がインとエキゾーストで異なり、バルブの長さもエキゾースト側の方が長いという、生産に手間が掛かる構造は改められ、バルブの挟み角も長さも共通という、一般的なDOHC2バルブのレイアウトとなった。

また、135系のエンジンで多用されていた、FIAT製の鋳物部品は使われなくなっている。

一方で、Dinoで確立したエンジンの下にトランスミッションを配置する独特のレイアウトは踏襲されている。

当時のトレンドであった半球形燃焼室や、ウェーバー製の4連キャブレター、オーバーラップが60度以上ある超高回転型のカム、カムの駆動にはタイミングベルトを用いるなど、その時代の粋を集めたエンジンであり、キャブレター特有の、いかにも空燃比が濃い湿った排気音ながら、レブリミットの8,000rpmまで一気に吹け上げるという、何とも痛快なエンジンに仕上がっている。

特筆できるのは、70年代前半に開発されたこのエンジンが、技術の進歩と共にアップデートされ続け、2003年まで、モデルでいうと360チャレンジストラダーレを最後に、実に30年もの間使われ続けたことである。

その間に発売されたスペチアーレである、288GTOやF40、また派生車種の208ターボなども同系統であり、エンジン本体の圧縮を落とした上ターボを装着している。

F40のレーシングカーでは600PS以上のパワーを発生していたが、驚くことに、それに耐えうる優れた基本設計を有していたのである。

このエンジンを70年代の当時に設計した方々の才能と努力には、ただただ尊敬の念を覚えるばかりである。