50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説 その2:F40

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FERRARI F40 engine

写真は、整備を終えたF40のエンジンを搭載する直前の様子だ。

今回はフェラーリのF40について解説してみたい。

前回308のエンジン解説で触れた通り、基本設計は驚くほど308クアトロバルボーレ(以下308QVと表記)と似通っており、そのことは、F40の場合はエンジン本体のサービスマニュアルが存在せず、サービスマニュアルのエンジンの項には、

「記載されていない事柄はMondial8のサービスマニュアルを参照せよ。」

という、素っ気無い注釈だけで済ませていることからも伺える。

だが、308はNAなのに対しF40はターボであり、しかも1.3Barが常用範囲という、当時としてはかなり高い過給圧のため、それに対応し内部の機構は、圧縮を落とすためトップを大きく凹ませたピストンや、強烈な燃焼圧力に対応するため、鋳鉄にニカジルメッキを施し強化たシリンダーライナー(308QVではアルミライナーにニカジルメッキを施してある)を採用していることや、潤滑はドライサンプ化されている等の変更点がある。

また、マグネシウムパーツを多用し、軽量化に並々ならぬ情熱を注いでいるのも特徴だ。

エンジン本体だけでも、ヘッドカバー、エンジン前後のカバー、オイルパン、インテークマニホールドなどがマグネシウム合金の鋳造で製作されている。

鋳物のマグネシウム合金は、じかに空気に触れると腐食が早い、軽いが強度は低いなどの厄介な欠点があり、それはF40に使われるパーツでも同様で、下地の粉体塗装が剥がれると、そこから蟻の巣のように腐食が進む、ヘッドカバーが経年により反ってきてオイル漏れを起こすなど、かなりメンテナンスに気を使う代物なのだが、そこはスペチアーレなのだから新車時の性能を最優先し、メンテナンスのことは後回しというスタンスが、いかにも当時のフェラーリらしい。

当時のフェラーリとしては珍しく、カタログ(478ps)と実際でパワーの違いがなく、マフラー交換程度で簡単に500psになる。

過給が上がりだすと一気に吹け上がる特性で、無造作にアクセルを踏むと3速でもホイールスピンするにもかかわらず、ABSやパワーステアリングだけでなく、ブレーキのブースターさえ省かれているため、ドライバーの高いスキルを要求される。

また、防音が全く施されていないキャビンに容赦なく入り込む、エンジンの轟音や盛大な風切り音、フェンダーに当たる石跳ねの音などと相まって、運転する時はドライブというより格闘であり、普通の乗用車の常識は通用しない非日常の世界である。

ただ、現在においてスーパーカーは700psが普通となり、電子制御も発達しホイールスピンやタイヤのスライドを、トラクションコントロールなど車両の制御で押さえ込むため、快適な上に恐ろしく速い。

流石に発売から30年以上の歳月と、それからの制御技術の進歩を感じさせられるのだが、それらの車と動力性能を比較してはいけない。

当時の技術を駆使し、執念で軽量化とハイパワーを突き詰めた、スパルタンの極みと言えるF40は、最もフェラーリらしいと思える。だが、絶対に今後は登場しない類のモデルである。