50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その3:348、F355のトランスミッション

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FERRARI F119 engine&transmission

今回はフェラーリ348系とF355に搭載されるトランスミッション(以下ミッションと表記)を解説してみたい。

写真は、Mondial tのエンジン組み立てが終わり、ミッションを取り付けたところだ。

かなり独特な形状をしたこのミッションは、348やMondial tで採用され、当初は5速だったが、F355にモデルチェンジした際、6速化している。

大まかな構造と動力伝達経路を解説すると、

エンジンクランクシャフトの回転は、長いシャフトで後端にあるクラッチに伝達され、その後減速して90度回転方向を変えた後に、ミッションケース最下部に位置する、横置きされたミッションのシャフトを回し、その上に乗せられたデフギアで最終減速し、駆動力をドライブシャフトに伝える。

一般的なミッションと比較すると何とも複雑な内部構造だが、その目的はミッションの低重心化と全長を縮めることにある。

そのため、横から見てデフギア直径のスペースにミッションのシャフト2本を収めてしまうという、大胆な発想で設計されており、当時の公式アナウンスであった、F1がボクサーエンジン(水平12気筒)を使っていた時代に、長大なエンジンでもパワーパック全体を短くする手法がルーツであるというのも、なるほどと頷ける。

V8ミッドシップのシリーズは、328までがエンジン横置きで燃料タンクはエンジンの左右に振り分けられていた。それが348ではエンジンが縦置きになり、更にキャビンとエンジンの間に燃料タンクが挟まる構造なので、エンジン、ミッション、燃料タンクが縦一列に並び、前後方向のスペースを大きく占有するようになった。

そのため、なるべく全長が短いミッションを新規で開発し、それまでのV8ミッドシップモデルと同様な路線の、ミッドシップらしからぬフロントが長くリアが短いボディーデザインを実現させたのであろう。

クラッチが最後部にあるため、マフラーを外せばクラッチのメンテナンスが容易な反面、ミッション本体の整備性は複雑かつ部品点数が多いため最悪であり、アッセンブリーの金額は当時で確か600万円程と、恐ろしく高価な品である。

その後F360からはオーソドックスな縦置きミッションに変更され、使われた期間は10年足らずと少量生産のフェラーリとしては短かった。だが、全長を短くするためにここまで拘るのか。という意味で非常に印象に残る機構である。