50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その9:Dino206と246のエンジン内部を比較する②

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前回に続きまして、Dino 206gtと246gtのシリンダーブロックを比較検証していきたいと思います。(以下は206、246と表記します)

今回は文章が主体となります。

前回は、206も246もシリンダーヘッドの寸法は大体同じと解説しました。それは、246でエンジンの全長は変更されていないということを、また、これは前回で言及しなかったのですが、エンジンのフロントカバーも206と246のシリーズ1で共通なので、それはエンジン全高も変更されていないことを意味します。

ということは、246のエンジンは206の外寸を変更せずに限界まで排気量アップを狙ったエンジンで、そのために変更する部品は、シリンダーブロック、クランク、ピストン、コンロッドまでという方針があったのではないかと想像します。

それだけの部品変更で、なおかつレーシングカーが出自という、そんなに内部寸法の余裕があるとは思えないベースエンジンで排気量2割アップを達成したという、驚きの結果となっています。

そこで改めて、206と246のボアストロークを確認してみましょう。

 

206:ボア86mm ストローク57mm

246:ボア92.5mm ストローク60mm 

 

エンジン全高が変わっていないということは、クランクケースも大幅には拡大できないため、元がギリギリであったストロークは、3mmしか延長できなかったということでしょう。

そこでボアを限界まで広げる流れになったと思われ、92.5mmの端数0.5mmという値や、ストロークが3mmアップに対してボアは6.5mmという、いびつな比率で拡大されたことが、いかにも限界値な雰囲気を醸し出しています。

では、ここでまたシリンダーブロックの写真を比較してみたいと思います。

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上が206、下が246です。

チェーンケース内側の形状を変更して、シリンダー間の肉厚を増やしています。

あと、シリンダー穴外周と、シリンダーを止めるスタッドボルト穴の距離を比較すると、246では明らかに距離が短く、仮にブロックをアルミで製作したとすると、ライナーを入れる寸法の余地が無いです。

まずボアを限界まで広げて2.4Lにするという目的があって、それをアルミのシリンダーブロックで実現しようとすると完全に強度不足になるため、鉄に材質変更したことが分かります。これは至上命題を達成するための手段として、私は英断だと思いますね。

ではその手法が、果たしてコストダウンかどうかということですが、変更されたのはシリンダーブロックだけでなく、同時にクランクシャフト、ピストン、コンロッドも新規で設計し、それらの生産型や設備を作っているので、膨大な手間と金額が掛かっている訳です。

量産メーカーでしたら生産台数が多いので分母が大きく、車両の製造原価に上乗せされるそれらの投資額は少なくなりますが、当時せいぜい数百という生産台数では、1台当たりかなりの金額になることでしょう。

少量生産メーカーでは、何も変更しないことが一番のコストダウンです。

それを単純に金属の重量単価で比較し、鉄だからコストダウンであると評価することは、的外れであるという結論に私は至りました。

 

 

 これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。