50の手習い。「オッサンの管釣りブログ」

50を過ぎてから管マス釣りを始めた素人オッサンの記録と、何故かフェラーリのメカニズム解説、自作ギターアンプやオーディオアンプの紹介、副業である執筆業のことも時々解説しちゃう。

フェラーリのメカニズム解説その17:F1システムの故障診断④ アキュームレーター編

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引き続きF1システムの故障診断について話を進めていきたいと思います。

診断が難しいケースが多いF1システムですが、今回は割と難易度が低めな油圧関係のトラブルについてです。

F1システムはクラッチペダルやシフトレバーを操作するための動力に油圧を用いていることは以前解説した通りですが、その構成は、油圧を発生させるポンプ、油圧を蓄えるアキュームレーター、油圧を断続させるソレノイドバルブ、そして作動部分であるクラッチのレリーズや、シフトを動かすアクチュエーターから成っています。

警告が点灯する場合において、ポンプが原因であることが多いとも以前紹介していますので、それ以外の部分を紹介していきます。今回はアキュームレーターに話題を絞ってみます。

 

「アキュームレーターが不良になった場合」 

ポンプで発生した油圧を蓄えておく役割のアキュームレーターは、球体の部品で中部はダイヤフラムで仕切られ、窒素ガスを充填してあります。そのダイヤフラムを挟んだ反対側に油圧を掛け、ガスを押し縮めることにより油圧を蓄える構造となっています。

内部の窒素ガスは、高圧になると微量ずつですが間に挟まれたダイヤフラムのゴムを通過し、オイル側に漏れて減っていくためアキュームレーターは消耗品であり、漏れた量に応じてアナログ的に性能が劣化していくという特徴を持っています。

では、そのガス漏れが多くなると一体どういった症状になるかというと、同じ油圧でもガス室の体積が少なくなるため、その分アキュームレーター内部に入り込むオイルの体積が増加します。

エンジンを停止した瞬間から、アキュームレーター内部のオイルは少しずつリザーバータンクに戻るため、アキュームレーター内部のオイルが多いと、オイルレベルを規定値に合わせていても停車中にオイルリザーバータンクが溢れ、作動油が外に漏れだす症状となります。

私はこの段階でアキュームレーター不良と判断し、交換することにしています。

更に症状が進み、窒素ガスがほとんど抜けてしまうと、ポンプが加圧を始めた瞬間にマックスの油圧になり、窒素ガスの反発力が無いのでクラッチやシフトのアクチュエーターを動かそうにも一瞬で油圧が低下し、ギアが入らないという症状になります。

また、アキュームレーター不良時特有の症状としては、上記の他にも、

 

①テスターでエラーを呼び出すと、オイルプレッシャーセンサー不良となっている。

②運転席ドアを開けてポンプが回った時の音が変になる。甲高くてなおかつ短時間しか回らない。

③F1の警告が点灯し、(430以降ではSLOW DOWNと点灯)数十秒ほどシフト操作を受け付けなくなる。その後復活しても同様の症状を繰り返す。

 

となります。

①の場合は、圧縮する筈の窒素ガスが無いため急激に油圧が上昇し、本来ならオイルプレッシャーセンサーからの信号でポンプを止めるところ、それが間に合わず油圧が規定値を大幅に超えてしまうために起こります。

コントロールユニットは、アキュームレーターが消耗品ということを前提にしていないため、油圧のデータがおかしいのはセンサーに違いないと、濡れぎぬを着せてエラーとしているので、このケースではプレッシャーセンサーを交換しても解決しません。

②も上記同様、規定値を大幅に超えながらもポンプが止まらないため、ポンプに負担が掛かった時の異常な作動音です。

③のケースでは、シフト操作をすると急激に油圧低下し、今度は規定の下限値から下回ってしまい、油圧が40bar以下になると安全装置が作動するため、シフト操作を一定時間受け付けなくなるからです。それが数十秒後に復活するので、そのサイクルで同じ症状を繰り返すことになります。

特に430スクーデリアや16Mは、より早いシフトスピードを実現するため他の車種より油圧が20bar高く設定されているので、アキュームレーターの消耗が早く、上記の症状が起こりやすい傾向にあります。

これらの症状から判断してアキュームレーター交換となるわけですが、車種によりアキュームレーター単品で部品設定されていたりいなかったりします。単品設定されていない車種は、パーツカタログ上ではソレノイドバルブユニット等が一緒になった200万円以上する品ごとになるので、まあそれは現実的ではないため工夫して、他車種や他メーカーの同等品を探して交換する訳です。

 

 これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。