フェラーリのメカニズム解説その26:F1アクチュエーターの分解修理
いやこの暑さでヘロヘロになっていた手習いオヤジでございます。
工場には冷暖房が入っているので、中で作業する分にはそれほどでもないのですが、私の場合、納車や引き取りが結構ありまして。
気温35℃の中でローダーに積み下ろしとか、一日何件かしていると、もうそれだけで結構ヘロヘロになっちゃうんですよ。もう年ですしね。
完全に夏バテで、家に帰るなり汗だけ流してもう寝るみたいな生活が続いてました。
今日は午前中だけ会社に行って、今日は休む宣言をした後、ビール飲んでひたすら寝てました。
お陰様で多少は気力が戻り、今日は久々にF1システムの解説をしてみます。
F1アクチュエーターの分解修理についてで、今回で一応F1解説シリーズの最後となります。
「アクチュエーターを分解修理する判断基準」
ギアが入らないからといって、いきなりアクチュエーターの分解を始めることはなくて、色々と診断した後に、これはアクチュエーター内部のオイルリークだろうと判断してから作業を始める訳でありますが、それに至るまでは結構な手順を踏みます。
まずは症状確認。
1-3-5とか2-4-6とか、マニュアルシフトでいうところのシフトレバーの位置が上か下かのギアに入ろうとする時に、ギア抜けする症状であること。
次は、テスターが必要なんですが、パラメーター表示で呼び出せるアクチュエーターのオイルリーク量が多いこと。
コントロールユニットはアクチュエーターの内部リーク量を監視しているため、その分量が具体的に表示され一見便利に思えますが、実はこれには罠があって、それは、リーク量を直接測るセンサーが存在しないため、シフトした時の油圧低下を基に、計算上で表示しているからで、アクチュエーター以外の構成部品が完調であるという前提なんです。
例えば、前述しましたアキュームレーターがダメな場合は、その油圧を蓄積できない劣化分がアクチュエーターのオイルリーク量に上乗せされる訳です。
そのため、アキュームレーターの劣化具合や、他にもポンプが発生する油圧のレスポンスなど、アクチュエーターオイルリークというパラメーターに含まれた、ノイズの要素を排除してから判断することになります。
これは360~430での判断基準ですが355F1の場合、内部リークしたオイルはリザーバータンクに戻らず大気解放され、そのまま外に出てくるので、外に漏れたオイルが多いか少ないかという基準で判断します。
「アクチュエーター分解修理で行うことは」
要は、分解して内部のオイルシールやOリングを交換していく作業です。
以下、写真で解説してみます。
これは360で
これは355です。
355の場合、後のモデルと比べると構造が原始的で、後に別体になるセンサーが内部に複雑に組み込まれていたりするので、同時にそれのチェックも行います。
取り外したシール類。
結構な部品点数です。これらを交換していきます。
製作したオイルシール。
内部の部品は供給されないので製作してストックしています。材質はテフロンで、360以降は金属粉入りの品が使われており、それを忠実に再現しています。
これが出来上がるまでに、製作する業者さんに何回通ったことか。
このように1つ1つシールを交換して組み上げていきます。
組み上げた後は、シフトフォークの機械的な位置とセンサーの値を整合させるセンタリングという作業、これは専用の治具とテスターが必要なので、それなりの設備を持っていないと出来ないのですが、それを行った後、車両に取り付けて作業は完了です。
これが私手習いオヤジの著書であります。
もし解説記事が良かったと思われましたら、是非ともご購入のご検討を宜しくお願いいたします。