手習いその23:リールを分解修理してみる②
今回も前回の続きで、ダイワのワールドスピン1500のリールを分解しながら観察していく様子です。
ローターを外すと次に現れた部品。
最初はベアリングかと思いましたが、逆転可能に切り替えるレバーと繋がっているので、ワンウェイクラッチですね。
工具のラチェットスパナとかで良くある、ローラーをシャフトに押し付けてロックさせるタイプ。そうかこの部分が歯車を使ったラチェットじゃないから、今時のリールは巻く時にカリカリいわないのか。
固定方法が意外で、本体に付いた金具に切り欠き部分を嵌めて乗せてあるだけ。なるほどセルフセンタリングと本体の保護が目的かな?
金具を外すと、ローターを回転させるシャフトのベアリングが見えます。
この機種では唯一のベアリング。このシャフトは差し込まれているだけなので引き抜くと、
へー。想像してたより精度が良さそう。材質は真鍮かな。
次は横の蓋を開けると、さっきのシャフトとスプールを上下させるギアに、ハンドルの回転を伝達する役割の大きなギアが現れた。
反対側から覗くとギアを固定するスナップリングが見えたので、それを外したらギアが外れた。
なるほどギアからカムを介してスプールを上下させているのね。ギアの回転運動のうち、横方向の動きはカムで吸収して、上下方向だけの動きに変換させています。
スプールを上下させるシャフトは、奥側のギアから出るピンに差し込んであるだけなので、簡単に手で外せます。
驚いたのがこのギア。そういえば、このリールの広告でギアのこと謳ってたよな。
結構精密な鋳造品ですね。しかも鋳造工程の後、旋盤で仕上げ加工も施しているという。
実売3000円位のリールに、こんな質の高いギアが入ってるんだあ。と感心しました。
さっきの真鍮シャフトのギアとの噛み合わせもバッチリですね。
一瞬不思議に思ったのはギアの固定方法で、車とかだと両端をガッチリ固定して動かないようにするんですが、このリールでは、ある程度ギア同士の距離が自由に動くよう、フローティングしてある。
両端を固定することのデメリットは、バックラッシュ(歯車同士の隙間)の管理が難しくなることだから、ハンドルを回す力を使って、ガタつきを押さえるため適度にギア同士を押し付けてる構造なのかと。
この固定方法のデメリットは、逆回転のトルクが掛かった時に歯同士の隙間が増えてしまうこと。例えば車のデフでこの方式だと、アクセルオフで地面からの減速トルクが掛かった時、盛大にギア鳴りしますね。
と考えてみたら、逆回転でハンドルを強く回すシチュエーションが無いから問題ないのか。なるほど良く考えて作ってあります。
で、スプールを上下させるためのギアも外して分解完了です。
バラバラになりました。
その後、良く観察してみると、スプールを上下させるギアに、シャフトの下部カム部分が乗り上げて干渉した痕跡が残ってました。
ギア表面に多数入っている直線的な傷です。
ラインを巻いている時、ギアが引っ掛かって一瞬レバーが止まるような症状だったので、この部分の引っ掛かりと考えて間違いないでしょう。
どうもこの傷の入り方だと、ハンドルやギアが決まった位置ではなく、シャフトの方に捻れが加わったタイミングで当たるのかな。
そこは捻れが生じないよう、本体の方にレールが設置されているのですが、上手く機能してないみたいです。
根本的な原因は、カム部分のバリがクリアランスを狭すぎる状態にしていることですね。
これで両方とも症状の原因が分かったぞ。
晩酌のつまみに分解した割には原因がハッキリして良かったです。
機械屋の習性なのか、自分の知らない機構を初めて見るのは面白いもので、分解しながら、「へー。こうなってんだあ。」とか、「あー。これだこれだ。」とかブツブツ言いながらの作業でした。
次回は部品を修理する様子を紹介していきます。